Hospice ホスピス って何?

★全米ホスピス協会のホスピスの定義は

 死にゆく人と家族に対して、身体的、精神的、社会的、霊的ケアを在宅と入院の両方の場面で提供する、緩和サービスと支援サービスの調和がとれたプログラムである。

 種々の専門家とボランティアが、多種職の医療チームを構成してサービスに当たる。

 患者の死後、遺族に対して死別後の援助を行なう。

 

 ここでいう「ホスピス」とは、ケアのあり方(プログラム)を意味し、それを施す場所は問われません。即ち「ホスピス」=「ホスピスケア」とされています。

そのキーワードは、

  ①全人的ケア

  ②家族(遺族)ケア

  ③チームケア

であると言えます。

 一方、「ホスピス」というと、「死にゆく人が最後に苦痛無く、穏やかに過ごす場所」というイメージが強く、実際、日本においても、場所として「ホスピス」という言葉が使われています。

 

 

★本当の緩和ケア病棟/ホスピスとは

 厚生労働省は「緩和ケア病棟」という名称を使っていますが、我が国では「緩和ケア病棟」=「ホスピス」という考え方でした。しかし、この「緩和ケア病棟」を開設できる施設基準は、人員や設備面などにとどまり、そこで行われているケアの内容については、ほとんど触れられていません。

 いくら施設基準を満たしたからと言って、本当の緩和ケア病棟/ホスピスとは言えません。やはり、ケアのあり方(プログラム)こそが重要である、と私たちは考えています。

 

 残念ながら、未だに、「ホスピス=死を待つだけの場所」、「ホスピス=あきらめた人が入る場所」などと誤解され、敬遠されることも多いです。中には、医師や看護師の居ない施設と同じように考え、「ホスピス」というと、「医療行為そのものが行うことができない場所である。」という認識の方もいるようです。

 当院のホスピスでも、未だに、医療者(医師や看護師)の方から、「胸に水が溜まったときに抜いてもらえるのでしょうか?」、「輸血はしてもらえるのでしょうか?」などという問いかけが多く、ホスピスとは何か、ホスピスではどういう治療が行われるのか、ということがまだ理解されていないことを痛感します。

 一般的に「ホスピス/緩和ケア病棟」では、抗がん剤治療などの、癌の治癒を目指すような治療は行いませんが、「治りたい」希望は支えていきますし、胸水や腹水穿刺、輸血、抗生剤投与、高カロリー輸液、などは、その行為が、本人や家族も希望し、明らかに苦痛緩和やQOL向上に繋がるのであれば、積極的に行われます。

 

 

★WHOの緩和ケアの定義

 「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族の生活の質を改善するアプローチをさす。それは、痛みやその他の身体的、心理社会的、そして霊的な問題を早期に認識し、適切に評価、治療することで苦痛を予防し軽減することにより達成することができる。」

 

 「ホスピス」がヨーロッパを中心に世界中に広まっていく中で、「緩和ケア」や「緩和医療」という言葉が生まれました。

 WHOの緩和ケアの定義は、前述の「ホスピスの定義」と本質的に同じです。しかし、「ホスピス」が「死にゆく人と家族」を対象にしている一方、「緩和ケア」は「生命を脅かす疾患に直面する患者と家族」を対象にしています。

 

 即ち、がん患者で言えば、末期になったから施すというケアではなく、「がん」という診断を受けたその時から「緩和ケア」は始められるべきである、と提唱しています。また、病気の種類も、「がん」に限らず、「神経難病」、「肝硬変」など、他の疾患にも適用されるべきであると言えます。多くの人に受け入れられやすい考え方です。

 

 

★ホスピスと緩和ケア

 厚生労働省は、がん治療を先進的に行っている病院において、早期から「緩和ケア」を提供できる体制(緩和ケアチーム)を整備しようとしています。これにより、患者さんは「がん」と診断された時から治療を受けている段階においても、「緩和ケア」を受けることができますし、いよいよ治療が困難となってしまった、いわゆる「がん末期」といった状況になっても、同様です。さらに、在宅で過ごしたい方のために、「在宅ホスピス」を提供できる体制作りも目指しています。

 「ホスピス/緩和ケア病棟」は、従来どおり、より穏やかな環境で、ボランティアを含む厚みのあるチームによって、患者さんのQOL向上に重きを置いたケアを提供する役割を担うこととなります。とりわけ、精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛の緩和にも力を注ぎ、家族ケア(遺族ケア)も大切にします。

 これらの体制がうまく整うと、患者さんにとっては理想的であると言えますが、日本においては、まだ多くの問題を抱えています。何より「緩和ケア」を担う医師や看護師が絶対的に不足していますし、病院の中でさえ「緩和ケアチーム」の役割がうまく理解されていなかったり、そもそも、「ホスピス」や「緩和ケア」を深く理解していない医療者が多いということも事実であります。

また、日本では「ホスピス/緩和ケア病棟」に入院する対象を、末期がんもしくはAIDS患者に限定していることも問題であると言えます。さらに、「緩和ケア」という言葉が、単なる身体的な苦痛の緩和だけを追及することだけに使われ、その原点である「ホスピスのこころ」がつい忘れがちとなっていることも懸念されます。私たちは、あえて「緩和ケア病棟」ではなく、「ホスピス」という言葉を使っています。それは、「ホスピス」に歴史の重みを感じ、またその理念はまさしく医の原点であると感じるからです。

 

 

★ホスピスの普遍性とホスピスのこころ

 ホスピスを知り、また、ホスピスに関われば関わるほど、このケアのあり方や考え方は、医療や看護の原点であり、またさらには一般の社会生活にまで通ずる考え方であることを痛感します。それを「ホスピスのこころ(ホスピスマインド)」と言うのなら、その普遍性を多くの方に知ってもらいたいと思います。

 

人を思いやり、その人に対して何ができるのか、を真剣に考え、純粋に困っている(病を抱えている)人に手を差しのべる、そういったこころを私たちはホスピスの中に感じるのです。

 当院では、「ホスピスのこころを持って、病院全体を運営していこう」という理念を掲げました。それは、「ホスピスのこころ(ホスピスマインド)」が、末期がんの方だけではなく、他疾患の方、或いは高齢者の方への医療や看護、介護にも通じるからと感じているに他なりません。「ホスピスのこころ」は「ホスピス」だけのものでは無いのです。

 

 

★函館おしま病院でのホスピス

 私たちは、「ホスピスは死ぬための場所ではなく、最後までその人らしく生きるための場所であり、どう生きるのかを考える場所でもある」と考えています。そして、そのためのお手伝いに労は惜しみません。

 

 

 

 

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